「あえない」、「あっけない」、「あどけない」など現在は形容詞ですが、本来なにかの否定形であったと思われることばのルーツに迫ります。「如才ない」「らちがあかない」などの言葉では、「如才」「埒」の意味も併記しました。
| あえない | あっけない | あどけない |
| あられもない | えげつない | おぼつかない |
| がんぜない | ぎこちない | さりげない |
| しがない | しどけない | じょさいない |
| すげない | せつない | そつがない |
| そっけない | だらしない | たわいない |
| つれない | とてつもない | 途方も無い |
| とんでもない | はしたない | ふがいない |
| まんじりともしない | みっともない | めっそうもない |
| もったいない | やぶさかでない | やるせない |
| 余儀ない | よんどころない | らちがあかない |
| らちもない | ろくでもない | |
あえな・い あへ― 【敢え無い】 (形)[文]ク あへな・し
〔「あへ」は動詞「敢(あ)ふ」の連用形〕
(1)予想していたよりもろく、はかない。あっけない。「―・い最期」「―・く敗れる」
(2)期待はずれで拍子抜けがする。
(3)いかんともしがたい。しかたがない。
あ・う あふ 【敢ふ】 (動ハ下二)
(1)よそから加えられる力に対して、その状態のままなんとか持ちこたえる。こらえる。堪える。
(2)さしつかえない。してもよい。
(3)(動詞の連用形に付いて)しおおせる。すっかり…する。
あっけな・い 【呆気ない】 (形)[文]ク あつけな・し 〔物足りないの意の「飽く気(け)なし」の転。「呆気」は当て字〕予期や期待に反して簡単・貧弱で物足りない。「―・い幕切れ」「―・く敗れる」
あどけな・(形)[文]ク あどけな・し
〔「あどなし」と「いわけなし」「いとけなし」などとの混交によって近世にできた語〕(子供のようすが)無邪気でかわいい。することが幼い。「―・い寝顔」
あられもな・い (形)[文]ク あられもな・し
〔「あられ」は動詞「あり」に可能の助動詞「れる」が付いて名詞化したもの。「そうであるはずがない」「あるまじきことだ」の意から〕似つかわしくない。特に、女性の身だしなみや振る舞いとしてふさわしくない。「―・い寝姿」
えげつな・い
(形)〔「いげちない」の転〕
(1)度を過ごして露骨に表現するさま。露骨で、いやらしい。「―・いことを言う」
(2)やり方に思いやりや人情味がない。情け容赦もない。「商売のやり方が―・い」〔もと関西方言。昭和期にはいり、次第に一般に用いられるようになった〕
おぼつかな・い 【覚束無い】
(形)[文]ク おぼつかな・し
〔古くは「おほつかなし」と清音。「ない」は接尾語。「おほ」は、はっきりしていないさまを表し、[二](1)が原義。「覚束無い」は当て字〕
[一]
(1)確かでなくはっきりしない。ぼんやりしている。「私の―・い記憶で言うと」
(2)うまく行く見込みがない。疑わしい。だめだろう。「成功はとても―・い」「明日の天気はどうも―・い」
(3)しっかりしていない。心もとない。頼りない。「―・い足取りの老人」「私の―・いフランス語でもなんとか用が足りた」
[二]
(1)ぼうっとして、はっきりしない。
(2)気がかりだ。心配だ。
(3)心細い。ものさびしい。
(4)長らく対面しない。無沙汰している。
(5)待ち遠しい。早く会いたい。
(6)不審だ。いぶかしい。
がんぜな・い ぐわんぜ― 【頑是無い】 (形)[文]ク ぐわんぜな・し
(1)幼くてまだ物事の是非・善悪がわからない。幼くてききわけがない。「未だ―・い三歳の春の御嬢様を/火の柱(尚江)」
(2)あどけなく無邪気だ。「幼児の―・い笑顔」
がんぜ ぐわん― 【頑是】 分別(ふんべつ)。わきまえ
ぎこちな・い
(形)〔「ぎこつない」の転。「ぎごちない」とも〕十分になれきっていなくて、動作や言葉がなめらかでない。「―・い手つき」
さりげな・い 【然りげ無い】 (形)[文]ク さりげな・し
考えや気持ちを表面に表さない。何げない。「―・い顔」「―・い調子で受け答えする」
しがな・い (形)[文]ク しがな・し
〔「さがなし」の転か〕
(1)とるにたりない。つまらない。「―・い芸妓といひながらも/当世書生気質(逍遥)」「―・い恋の情が仇/歌舞伎・与話情」
(2)まずしい。「―・い暮らし」
しどけな・い (形)[文]ク しどけな・し
(1)身なりなどがきちんとせずだらしない。しまりがない様子である。「―・いネグリジェ姿」
(2)順序が乱れている。秩序がなく雑然としている。
じょさいな・い 【如才無い】 (形)[文]ク じよさいな・し
〔近世以降の語〕気がきいて人をそらさない。行き届いていて愛想がよい。如才が無い。「―・く話しかける」「―・くその場をとりつくろう」
じょさい 【如在・如才】 (名・形動)[文]ナリ
気を使わずに、いい加減にすること。十分な配慮をせず、手抜かりがあること。また、そのさま。疎略。下に否定の語を伴って用いることが多い。→如才が無い→如才無い
(名)〔論語(八)「祭如レ在、祭レ神如二神在一」による。「如在」と書く〕神の前にあるがごとく、つつしみかしこまること。〔もと「如在」と書きの意であったが、形ばかり敬意を表す意から、の意に転じ、「如才」と書くようになったという〕
すげな・い
【素気無い】 (形)[文]ク すげな・し 同情や思いやりがない。愛想がない。冷淡である。つれない。「―・い返事」
せつな・い 【切ない】 (形)[文]ク せつな・し
(1)(寂しさ・悲しさ・恋しさなどで)胸がしめつけられるような気持ちだ。つらくやるせない。「―・い胸の内を明かす」
(2)大切に思っている。深く心を寄せている。
(3)苦しい。肉体的に苦痛だ。
(4)せっぱ詰まった状態である。
(5)生活が苦しい。
せつ 【切】 (形動)[文]ナリ
(1)思いがひたすらで強いさま。せち。「―なる願い」「成功を祈ること―である」→切に
(2)感にうたれるさま。身にしみて強く感ずるさま。(3)切迫(せつぱく)しているさま。
そつがな・い
手ぬかりがない。抜け目がない。そつのない。「やることに―・い」「そつのない受け答え」
そつ (1) 手落ち。手ぬかり。「―なくこなす」 (2)無駄。
〔「素気(すげ)ない」から生じた語〕
(形)[文]ク そつけな・し
思いやりがない。好意が感じられない。そっけがない。「―・く断られる」
だらしな・い (形)[文]ク だらしな・し
〔「しだらない」の転。近世以降の語〕
(1)(外面的に)きちんとしていない。整っていない。「―・く口を開けて寝ている」「―・い服装」
(2)(内面的に)節度がない。毅然としていない。しっかりしていない。「金銭に―・い」「政府の顔色をうかがうマスコミの―・い姿勢が問題だ」
だらし
〔「しだら」の「し」と「だら」を入れ変えたもの〕物事のけじめのはっきりしていること。しまり。「―のない男」「―がない」
たわいな・い
【たわい無い】 (形)[文]ク たわいな・し 〔近世以降の語。「たあいない」とも〕
(1)しっかりしたところがない。(幼くて)思慮分別がない。
(2)手ごたえがない。張り合いがない。「―・く負けてしまった」
(3)取るにたりない。とりとめもない。「―・い話で時間をつぶす」
(4)酒に酔って正体がない。「酔いつぶれて―・く寝込む」
たわい
(1)しっかりした態度や考え。多く「たわいがない」「たわいのない」「たわいもない」などの形で用いる。「―もないことを言う」「―のない話」→たわいない
(2)(酔ったりして)正体がないこと。
〔「連れ無し」で、関係がないさまを表すのが原義。古くは[二](3)のように自然現象に対しても用いられた。平安時代には[一]の意でも用いられ、次第に対人関係における冷淡さを意味することが多くなった〕
[一]人の気持ちを思いやろうとしない。思いやりがない。冷淡だ。無情だ。「―・く断る」「―・い仕打ち」「―・い人」
[二]
(1)そしらぬ顔をしている。よそよそしい。平然としている。
(2)思うにまかせない。意のままにならない。
(3)変化を示さない。もとのままだ。
(4)恥知らずだ。あつかましい。
とてつもな・い
道理に合わない。とんでもない。とほうもない。「―・く大きいスイカだ」
とてつ 【途轍】 〔「轍」はわだちの意〕すじみち。道理。
途方もな・い
(1)筋道にはずれる。道理にはずれる。途方途轍もない。「―・い無理難題」
(2)並はずれている。とんでもない。途方途轍もない。「―・い大きな計画」
(3)手段にまよう。途方に暮れる。
途方
〔方向の意〕
(1) てだて。方針。手段。 (2)道理。筋道。
とんでもな・い
(形)〔「途(と)でもない」の転という〕 (1)全く思いがけない。常識では考えられない。意外だ。とほうもない。「海上都市とは―・い計画だ」「―・い時間に訪問して恐縮です」
(2)(非難する気持ちをこめて)たいへんなことだ。けしからん。「全く―・いことをしでかしてくれた」「―・いぬれぎぬだ」
(3)相手の言うことを強く否定する語。「『景気がよさそうだな』『―・い、赤字で困っている』」
はしたな・い (形)[文]ク はしたな・し
(1)礼儀に外れていて品がない。上品ではない。下品だ。いやしい。なさけない。「そんな―・い言葉を口にするな」「―・いふるまい」
(2)どっちつかずのさまである。中途半端である。
(3)きまりが悪い。まが悪い。
(4)そっけない。つれない。
(5)迷惑である。
(6)程度がはなはだしい。
はした 【端た】 (名・形動)[文]ナリ
(1)ある単位以下の数量。また、数がはんぱであること。端数。「―を切り捨てる」
(2)はした金。
(3)どっちつかずであること。中途半端で引っ込みがつかないこと。また、そのさま。
(4)数の不足している・こと(さま)。
(名)雑役に使われる身分の低い女性。はしため。
ふがいな・い ふがひ― 【腑甲斐無い・不甲斐無い】 (形)[文]ク ふがひな・し
情けないくらいだらしない。意気地がない。「連敗するとは―・い」「われながら―・い」
まんじりともしない
まんじり (副)(多く「と」を伴って)
(1)ちょっと眠るさま。多く、打ち消しの語を伴って用いる。「―ともしないで夜を明かす」
(2 )じっと見つめるさま。
みっともな・い
(形)〔「見とうもない」が変化した「見ともない」の促音添加〕とても見ていられない。体裁が悪い。見苦しい。「―・い姿」「―・い負け方」「あまり―・いところは見せたくない」
滅相もな・い
とんでもない。あるべきことではない。
めっそう ―さう 【滅相】 (名)〔仏〕
(1)有為四相の一。現在が滅して過去にはいる相。→四相(1)
(2)真如が不変で、寂滅であること。
(形動)[文]ナリ
〔(1)の意から〕とんでもないさま。程度のはなはだしいさま。
もったいな・い 【勿体無い】 (形)[文]ク もつたいな・し
(1)(有用な人間や物事が)粗末に扱われて惜しい。有効に生かされず残念だ。「まだ使えるのに捨ててしまうとは―・い」「あんな有能な人物を放っておくのは―・い」「こんな事をしていては時間が―・い」
(2)(神聖なものが)おかされて恐れ多い。忌むべきだ。「神前をけがすとは―・い」
(3)(目上の人の好意が)分に過ぎて恐縮だ。かたじけない。「御心づかい―・く存じます」
(4)(あるべき状態からはずれて)不都合だ。不届きだ。
もったい 【勿体】
〔本来は「物体」で、物の形の意〕
(1)態度などが重々しいこと。威厳があること。「―がある」
(2)態度や品格。風采。
…する努力を惜しまない。喜んで…する。
やぶさか 【吝か】 (形動)[文]ナリ
(1)ためらうさま。思いきりの悪いさま。
(2)物惜しみするさま。けちなさま。
やるせな・い
【遣る瀬無い】 (形)[文]ク やるせな・し (1)思いを晴らすことができずせつない。つらく悲しい。「片思いの―・い気持ち」
(2)施すべき手段がない。どうしようもない。
よぎな・い 【余儀無い】 (形)[文]ク よぎな・し
(1)それ以外に方法がない。やむをえない。「―・い事情で欠席する」
(2)議論の余地がない
(3) へだて心がない。
よぎ 【余儀】 ほかの事。ほかの方法。
よんどころな・い 【拠ん所無い】 (形)[文]ク よんどころな・し
〔「よりどころなし」の転〕そうする以外にどうしようもない。やむをえない。なんともしかたがない。「―・い事情があって会合に出られなかった」
らちが明かない
物事の決まりがつかない。事態が進展しない。決着がつかない。「電話で話をしても―ない」
らちも無・い
〔一説に「臈次(らつし)も無い」の転とも〕
(1)とりとめもない。たわいもない。らっちもない。「―・いことを言う」
(2)順序・秩序が乱れている。また、筋道が通らない。らっちもない。
らち 【埒】
(1)かこい。しきり。特に、馬場の周囲の柵。
(2)物事のきまった範囲。限界。
(連語)なんのねうちもない。つまらない。「―・い男に夢中になる」